side yoshiko

1/8
前へ
/638ページ
次へ

side yoshiko

 夢のように幸せな新婚旅行が終わると、余韻もそこそこに現実に引き戻された。  今年度は、新入社員に中途採用とこの営業部は数人の人員補填があり、私たちが新婚旅行に行く頃には気持ちよくお休みをいただけた。もちろん、帰って来たら忙しいだろう事は予想していた。  目の前、わいわいと賑やかなフロアは活気があり、いやー、新入社員もすっかり馴染んで、すでに戦力で、あと数か月後にはまた次の新人が入って来る。キラキラじゃん、キラキラ。この人たちより若い人が入って来るのか―。なんて気を逸らす。  私の前の席は空席で、いや、たとえご在席だったとしても、無口故この賑やかさとは無関係。無関係なんだろうけどさ……。姿が見えるのと見えないのとでは違う。ぜんっぜん違うのよ。  ぐっとペンを持つ手に力が入った。  仕事……仕事。わかってる、わかってる。でもさ、新婚だよ、新婚。酷くない!?新婚早々出張なんて。しかも、1か月以上!も会えないなんて!!  部署全体的にはバタバタしている。早くも次の新入社員を迎える準備や事業の共有、自分の仕事以外にも外回りで出て行く人の補佐、フォロー、休んだ分の溜まった仕事と時間はあっという間に過ぎて行くに違いなかった。  同じ部署だし、状況はわかるから、そういう意味では心配はないんだけど……。なんせあの人無口だから……。
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25045人が本棚に入れています
本棚に追加