第1話 side yoshiko

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 私と保坂大輔は共通の知人を通じて知り合い、ごく自然に付き合うようになった。  あの麗しい会社の人に比べれば落ちるかもしれないが、大輔は万人受けする好青年で、笑うと二重になる大きな目が付き合った頃から好きだった。  仕事に向ける真摯な姿勢も尊敬できた。私にはもったいないくらいの人だ。今年になって向こうの仕事が忙しくなり、多少の変化はあったものの、私たちはお互いが生活の一部になるくらいの月日をともに過ごした。  お互い穏やかな性格もあってか喧嘩もなく、特に不満もなく、落ち着いた関係が続いている。  ずーっと続くこういうのが、幸せなんだろうな。いずれは彼と結婚するのだろう。彼もそう思っているのは、彼を見ていればわかる。  “タイミング”あとは、それを待つだけなんだ……。  これまで、私たちは特に予定がない限り習慣のように平日1回と、休日を一緒に過ごしてきた。  私の誕生日を再来週に控えたあたりから大輔は仕事がより一層忙しくなってきたらしく、なかなか会えていない。  ここ数年、彼がどれだけ仕事に打ち込んできたのか知っている。だから、今の私にはただ見守ることしか出来なかった。  それでも何とか平日の仕事帰りに「少しだけ」と、うちに立ち寄ってくれたりもした。随分遅い時間だったことから、忙しさが分かる。  大輔は疲れた顔をしていたが私の顔を見るといつもの優しい目で笑った。  3年前とは違う、年相応に少しくたびれだした目元。それもまた一つ彼の魅力に加わった気がして、愛おしい。わざわざ会いに来てくれる。こういうところが、彼の誠実なところだ。  ――それからも、会えていなかったがメッセージでの連絡は変わらずくれていた。 『ごめん。今週末も時間作れそうにない。明日の昼食、一緒に行かないか? ちょっとうまいとこ、予約する』  大輔とは会社も近いとあってたまにランチデートもしていた。ちょっとうまいとこって言ってくれたのは会えていない埋め合わせのつもりなのだろう。  いいのに、そんなの……。でも、うれしい。すぐに快諾の返信をした。
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