プロローグ

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プロローグ

 昼間はまだ暑さが残り、朝夕は冷たい風が身に染みる。その寒暖差に秋の深まりを感じる10月の夜だった。  友人の1人から『報告』の題名で1通のグループメッセージが届く。何となく内容は察しがつく。  熱めに入れたコーヒーを一口飲んでからメッセージを開く。学生時代からの女友達数人で構成されたグループメッセージ。もうすでに数人が返信していた。 『おめでとうー!! 』  可愛らしいスタンプが軽快な音とともに、画面を彩っていく。遡る様にスクロールすると、加奈からの報告メッセージ 『結婚しまーす!! 相手は……もちろん、純君です! 』  それに続いて、テンションの高いスタンプ。  来月には、29歳になる。この年で『報告』となると『結婚』もしくは『妊娠』この2つが妥当だ。 「やっぱりね……」  私も負けじと華やかなスタンプを送った。少し前までは、女友達のこういった類いの報告も傍観のままに祝辞を送る事が出来た。それが、いつの間にかほんの少し……取り残された様な、先を越されたといった様な、嫉妬混じりの焦燥感を伴った感情が心に影を落とす様になった。純粋に祝辞を送る事ができない自分にもまた、違う影が落ちるのだ。  結婚か……。
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