第6話 side yoshiko

2/6
24468人が本棚に入れています
本棚に追加
/638ページ
 数人の足音と声が聞こえ、ゆっくりと近づいてくる……。  きた!帰ってきた!!お、お向かいの席の方も!!! 「おはよー」 「おはようございます」  口々に挨拶をしてそれぞれが席に着く。大人な皆様は昨日の事をスルーして下さっている。だけど、時々向けられる心配そうな視線に気遣いを感じる。    いや、もうぜんっぜん大丈夫なんすわ。忘れてました!さっきまで!えへへー。なーんて、言えるわけもなく……手元の書類に目を落とす 「あ! そうだ……これ、今週中に記入して提出していただけますか?  私、まとめて上に持っていきますので」  そう言って、書類を順に手渡した。 「あと……業務中に失礼します。昨日はご迷惑をおかかけして、すみませんでした。そして、ありがとうございます」 「とんでもございませーーん」  るなちゃんが何でもないように明るく言ってくれる。 「うん」  そう言って麗佳さんがポンポンと背中を叩いてくれた。 「色々あるよね……」  そう言ってニッと笑う吉良さん。軽くウィンクする。他の男がしたら、指差して笑ってしまうジェスチャーも彼がすると自然かつ胸キュンポージングだ。体の細胞が急にヤル気を出す。  はぁ、眼福……。じゃ、ねーや。ありがたいな。優しさにじんわりくる。  そして、向かいの席だってのに1度も見ることが出来ていないそちらの方向にそおっと目を向ける。バチっと目が合い  もう何回目かもわからないけれど……石化した。 「すみません、河合さん。これなんですが……」  パソコン越しに書類を出し、説明を始められた。はい、信じられないくらい平常運転。かんっぺきに、意識してるの私だけ。  そして、これももう何回目かわからないけれど……やっぱり夢?妄想?とリフレイン。  人を石にしといて、放置。いや、石になっているのも気づいてないのか。自分の能力を知らない、罪作りな美しきメデューサ。 「それと……」 「はい」 「昨日のカップの件、有効ですので」  そう私にだけ聞こえるようにおっしゃったもんで……夢じゃ無かったらしく……石像ならぬ赤像になった。
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!