新しいメニュー

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新しいメニュー

私は、某回転寿司チェーン店の商品開発部に勤めている、松木山と申します。 今日は、倉田川会長が直々に試食してくださる冬の新メニューのプレゼンの日なのです。 この日のために私は妻の協力を得、新しい寿司を開発しました。 それは、アサリの佃煮をパリッパリの海苔で軍艦巻きにし、仕上げにおろし生姜をのせた「アサリ軍艦巻き」なのです。 プレゼンは、私と倉田川会長、そして同期でありライバルである山田山と、老舗の寿司屋「丸井寿司」で行われたのです。 まず山田山がプレゼンした寿司は、レバーペーストを軍艦巻きにしその上に味付けしたトンブリをのせたものなのでした。私は一口食べ、その美味しさに驚愕しました。  山田山は言います。 「レバーペーストはフォアグラを、トンブリはキャビアを表しています。高級食材を食べたことのない低下層の人々に夢を味わってもらいたいのです。」  若干、人を小馬鹿にしておりますが、コンセプトもしっかりしています。  倉田川会長は無表情のまま、山田山の寿司を3貫食べました。  今度は私の寿司です。  「アサリは日本人の父です。生姜は大地の母なのです。」  山田山の寿司に動揺した私は、よく意味の分からないことを口走りました。  倉田川会長は黙って1貫食べました。山田山も黙ったままです。 「どうして!」  突然倉田川会長が大きな声を出しました。 「どうして、軍艦ばっかり!」  丸井寿司の親方は黙って包丁を研いでいました。 「最近の若いやつは軍艦ばっかり!私の寿司を食べてみなさいっ!」 「こっ、これは・・・!」  倉田川会長はその場で寿司を握り始めました。 「ヘイ!お待ち!!」 山田山と私の前に出されたのは、何と軍艦巻きでした。何だか緑色のものが載っています。一口食べると、砂のようなものがガリッとしました。それは、おそろしくまずかったのです。 「こ、これは何ですか?」 「これは、小松菜の寿司じゃ。」 「・・・・・・。」 私たちはそれ以上何も言えませんでした。 丸井寿司の親方は、やっぱり黙って包丁を研いでいました。 倉田川会長は、自分の握った寿司を、何と7貫も食べたのです。
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