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そうか。やはりそういった細かい事態を想定した上で志賀は常日頃から人と会話しているのだな。麻木も他人との会話にはそれなりに気を遣っているつもりだが、ここまで相手の心理に沿った言い方はできていない。その都度あたふたして対応するにとどまっている。
『人付き合いの達人』と八奈見に称賛されるだけのことはある。八奈見も志賀ほどの詳細なアドバイスはできないと見込んだからあの場でそこまで助言してくれなかったのかもしれない。いや、セクハラ問題なら恋人である志賀を差し置いて自分が意見することは違う、と思った可能性もある。
「そして、ここまで説明しておいて今さらなことを言うようだけど、金谷さんらにセクハラ相談をすることによって、いくら口止めしたとしてもまったく外部へ漏れない保証はないということ。好奇をそそる話題だから、『ここだけの話だけど』とか『他の人には言わないで』なんて言いつつ他人に口外されてしまう可能性がある。それはあらかじめ覚悟しておかなきゃならないと思うよ」
「そうですね。その可能性もあると思います」
「通常、相談っていうのは口の堅い人にするものだけど、今回はそうも言っていられないからね。君が外部へ噂として広まるのが嫌だというならこの案も破棄して別の案を考える必要があるかな」
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