2/42
5992人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
 業務の割り振りが変わってから、思っていたよりは順調に全体が回っていた。  それまで担当していた業務を入れ替えに近い状態にする羽目になり、まずそれに手間取ったことは事実だ。  だが、福士や土屋から余計な仕事がふられずに済むようになり、集中しやすい環境になったことは大きな成果といえる。  釘刺ししたことで福士は自ら麻木に話しかける機会を減らしてくれたし、土屋のほうも金谷や村山が巧くガードしてくれた。だからあれ以降彼らとまともに会話していない。必要最低限のみ、といった程度だ。  しかしながら福士とは同じ合議制裁判に出るので、やりとりが発生するのは避けられない。書類をこれどうぞ、と渡すだけでも彼は麻木と接することが嬉しいのか、ありがとう、と心底嬉しそうな笑顔になる。  その顔を見ると、罪悪感を持ってしまう。揉め事にまで発展したせいというのが大きいが、それでも麻木が金谷に相談したために今の状況を作ったことになるわけで、福士を完全にシャットアウトしたのはまぎれもなく麻木ということになる。  セクハラや業務停滞に困っていたからこれでいい。そう思う一方、でも福士は片想いしている麻木と接触の機会を増やしたかっただけだとしたら、ここまで部を挙げて大々的に彼を吊し上げるようなことをしたのはいい結果と言えるだろうか、という疑問も持ってしまう。麻木はそういうことをしたいわけではなかった。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!