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「君は大勢の人間から告白されたりナンパされたり口説かれたり、毎日のように誰かから狙われるほど競争率の高い人気者だ。俺にはもったいないくらいだよ」 「そんなこと…」  そんなことはない。むしろ逆だ。  麻木の場合は、ただ顔を見て抱きたいと思う男が寄ってくるだけのことで、中身はまったく面白味のない人間だ。だから大概の者は一度抱けば満足するだろう。長く付き合いたいとは思わないはずだ。無表情で会話もつまらない人間と誰が長期間一緒にいたいと思うのか。  でも志賀は違う。見た目だけじゃない。能力も高く、人間関係が広く円滑で、誰からも好感度が高い。彼に憧れる人間は多くいて、女性から常に言い寄られていることも知っている。何度か見かけた。見ないふり、知らないふりをしているだけのことだ。断ってくれているだろう、と志賀を信じて追及さえしない。麻木と同様に、志賀だって嫉妬されてもどうしようもないし、困るだろう。  先ほどのような気まずいことがあってもすぐにこうして謝ってくれて、気遣ってくれて、愛情を注いでくれる。  そんな志賀の恋人であることが身に余るのは麻木のほうだ。
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