27/31
前へ
/421ページ
次へ
「特捜部だけがカッコイイと思っているわけではありません。法廷での検事としての仕事も素晴らしいと思っています」 「だけど君は、身体が丈夫なら警察に入りたかったって言ってたよね?」 「ええ。でも今は裁判官の仕事に誇りを持っていますし、仮に今から警察に入れるとしてもそうしないでしょう」 「そうなんだ。てっきり入れるなら入りたいのかと思ってたよ」 「憧れが残っているというだけの話です。子供のころ野球選手に憧れていたとしても、大人になれば別の職業に就くでしょう。でも野球が好きなことに変わりはないから草野球チームに入ったり、プロチームを応援したりする。だからといって別に今さらプロ選手を目指しているわけではない。それに似ています」 「なるほどね。そういう感情だったのか。よくわかったよ」  納得してくれたのか、志賀はそれ以上追及してこなかった。 「志賀さんはずっと検事になりたかったのですか」 「そういうわけじゃないよ。たまたまかな。子供のころから目指していたとか憧れていたわけじゃない」 「ではなりたいものはなかったのですか」 「うーん。色々夢はあったけど、一番は料理人かな」  それはそれで天職だったのではないだろうか。才能は言うまでもないし、今既にプロ並みだと思う。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6057人が本棚に入れています
本棚に追加