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 翌朝、普段より身体がだるくて、やはり志賀が昨夜いつにも増して麻木を強く求めてきたように感じたのは間違いじゃなかったと気づいた。  起きると朝食を作っていた志賀は麻木に対し、いつもどおりにおはようと微笑んでくれた。  今日も志賀がいてくれる。幸せな朝がある。そのことに毎日感謝している。  通常と変わりなく二人で朝食を取り、一緒に出勤し、彼は途中で職場の人間や知人に出会うたびに会話を交わしている。麻木はその時にそっと離れる。そして互いの職場に着くころに別れた。  以前は八奈見が一番先に来ていたが、彼がいない今、大概麻木が一番乗りだ。だから机の上に置かれた書類を捌く前に、執務室内の整理をする。散らかったものを片づけ、共有のものは雑巾で拭いて軽く掃除をする。業者が清掃に入っているけれど、デスクの上や精密機器やファイル、書棚のほうまでは触れないらしく、そのあたりには埃が溜まりやすいからだ。  本来それらの雑用は一番の若輩者である上田の役割だが、別に決まりがあるわけでもないので彼に強制的にやらせようとは思わない。そこまで縦社会が浸透した職場ではないから、気がついた者がやればいいと思っている。
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