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 だから福士からも『これは誰の担当?』と問われることが多々あるが、決まっていないとしか言いようがない。庶務は事務官がやってくれるものもあるが、基本的に皆自分でこなしている。  業務上の補助が必要なものは書記官や事務官に依頼している。書記官は村山のようにベテランだと裁判官に並ぶほどの見識があるが、彼らは司法試験に通っていない者がほとんどなので、裁判官によっては書記官をあてにしない者もいる。逆に丸投げに近い者もいる。人それぞれといったところだ。  麻木は確固たるこだわりもないので、八奈見がいた時と同等のボリュームを彼らに依頼している。振り過ぎても書記官のほうだって困るだろうし、まったく頼らないというのも信頼してもらえていないと思われそうだ。  いやしかし本音を言えば、そんなことは言っていられないというのが実状だ。忙しい時は猫の手も借りたいほどだから、彼らの協力なしでは日程の決められた公判をこなしていくことが難しい。ゆえに頼るしかない。  そして八奈見から福士に入れ替わりがあったように、この四月に第一刑事部の業務に携わる書記官及び事務官のメンバーも一名ずつ計二名異動し、代わりに新顔がそれぞれ二名加わった。  二人とも二十代の若手で、男性書記官一人、女性事務官一人だ。
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