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それはいいのだが、こちらも福士と同様、麻木にとっては厄介な面子なのだった。
「麻木さん、覚醒剤所持の資料を確認して欲しいのでお願いしてもいいですか?」
書記官室に入った麻木に資料を持ってきた新入りの男性書記官 土屋がにこやかに申し出てきた。
「ええ。わかりました」
「あ、じゃあこちらにどうぞ。すみません、この椅子座面が堅いのでソファ席のほう行きますか?」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「あ、コーヒー淹れてきますね。ちょっと待っててください」
いや、そこまでしなくても。断ろうとしたが、土屋は既に場を去った後だった。
はあ、とため息が零れた。たかが打ち合わせで客のように茶やコーヒーを出す必要はない。長丁場になるならともかく、今回は簡単な伝達で済む用事だというのに。
引き留められてしまったため、打ち合わせ用の席に座って待っていると土屋がコーヒーを持ってやってきた。麻木の前に置いてくれたので礼を言う。
「ありがとうございます。しかし、ただの打ち合わせや簡単な所用でこういったお気遣いは結構です。お気持ちは有り難いですが、一日のうち何度も往復しますし、正直きりがないので」
「忙しいご身分ですからね。お引き留めする形になっちゃいましたか? すみません、気が利かなくて」
「いえ。折角ですから頂きます」
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