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 悪意ではなく良かれと思ってのことだから責めても仕方ない。麻木はフォローとともにコーヒーを一口含んだ。  その様を土屋は食い入るようにじっと見つめてくる。  コーヒーを飲む口元、くちびるの辺りに注目しているのがわかった。  こういう視線は心当たりがある。  というか、常にこの手の視線を多く男から受け過ぎて、慣れてしまったが。 「麻木さんはコーヒーがお好きですか? お茶のほうが良かったですかね?」 「コーヒーもお茶も好きですから、どちらでもお気遣いなく」 「それならカフェなんかも行きますか?」 「ええ。休日にはよく利用します」 「あ、じゃあ今度一緒に行きませんか? コーヒーの美味しいお店を知ってるんです」  ああ…。  嬉しくない展開に話題が進んでしまい、心の中でまたため息をついた。  どう考えても、土屋は麻木に好意を持っている。おそらく恋愛対象として。  福士に次いでまたしても。うんざりせずにはいられない。  福士と言えば、先日アプローチに対してきっぱりと断りを入れたので懲りたのかと思いきや、やはり以前同様必要以上に麻木との接する機会を増やそうと何かと絡んできている。流石に手を触ってくるようなことはなくなったが。恋人がいると告げたことは効果がなかったということだろう。それとも奪うくらいの気持ちでいるのだろうか。しつこい男だ。
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