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 そして説明を受けた後に資料を受け取り、書記官室から出ようとしたところで、もう一人の新顔の女性事務官 秋本(あきもと)と視線が合った。  彼女は麻木の顔をじろじろと不愉快そうな目付きでもって一瞥してきた。  秋本は初対面の時こそ愛想良く接してくれたが、その次会った時には既に今のようにふてぶてしい態度になっていた。直接接する機会は多くないので今のところ業務上特に支障はないが、やはり気分がいいものではない。  そして通りすがる時にとうとう嫌味めいたものを言われてしまった。 「…男なのに男から人気って凄いですよねー…」  くすっと嘲笑混じりに漏らされたつぶやきには明らかに悪意を感じたので、聞こえないふりをして素通りした。  これまでも経験があるからわかる。女性は感情的で妬む生き物だ。特に自らの容姿に自信があり、持て囃されてきた者ほど麻木のような男に敗北感を持ってしまった場合、激しい嫉妬心をむき出しにしてくる。プライドが傷つけられるのだろう。陰口を叩いたり悪い噂を流したり、何かと陰湿に攻撃してくる。
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