貴方に恋文を書きました

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 捨てるのはまだ早いです。  新しいとは今までにないということですね。ということは、この世のもの大体は全く同じなんてことはなく常に変わり続けますから、大概のものは常に新しいと言えますね。  例えば、貴方です。  貴方はわたしと別れます。そしてわたしの古い恋人になります。新しい、の反対は古い、ですね。  ですから貴方は、新しいのであり古いのであります。  新しいこととは古いことだなんて、面白いと思いませんか。  そんなことは起こりえない、矛盾しているって? 論理学みたいな攻め方をするのですね。ではどこに間違いがあったのでしょうか? この『矛盾』が生じてしまったのはどうしてでしょうか?  常に変わり続けるもの、大概のものを全て『新しい』とくくってしまっていること、でしょうね。つまりそうするとその中には『古い』も含まれてしまいますね。古い新聞紙はさらに古くなることで、常に変化している、新しくなる、と言えてしまいます。  常に変わり続けることを『新しい』と言ってはいけないようなのですね。しかし、もう1つ違う考え方をすると、別に矛盾していないと思うのです。  要は、『新しい』の中に『古い』を含めることを認めてしまえばいい話です。今までにない状態になること、を新しいと言ってしまえば。常に変わり続けることの1つに『古くなる』様子も含まれます。新聞紙のように。  すると、新しいは古いと並立しえます。  言い忘れました。――貴方は貴方です。新しいし古いと言うことはできますが、新しかろうと古かろうと貴方は貴方です。新しいと古いとが並立しえるのは貴方が貴方だからとも言えます。  貴方は古い恋人であり新しい恋人です。変化が終わる時が来るまで――貴方が好きなのです。  照れくさかったので、故意に重い荷物を携えて遠回りをしてしまいました。  これで伝わったのでしょうか。  お付き合いしてくれて、ありがとうございます。荷物が重くとも、人生という道で貴方と出会えて幸せです。  
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