母性

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 「元気に育ってますね。予定日を、今日は確定しましょう」  ここは薄暗い内診室。ドクターがエコーで胎児の体長を測って、出産予定日を機械で計算している。置いてけぼりの私……。内診台の上で股をぶざまに開いていた。すると、 「お母さんも見てみますか、赤ちゃん」 内診のモニター画面がこちらに向けられ、私は愕然としてしまう。ドクターが言った「元気な赤ちゃん」は頭でっかちで、不気味な物体そのもの。まさしくそれは私の中を浸食するエイリアン……。そして、次の瞬間、エイリアンがこちらに向かって微笑んだ。  「きゃあああああああああ!」  私はパニックになって、両足をばたつかせてしまう。ドクターやナースが落ち着かせようと優しく声を掛けてくれるが、我が子がエイリアンに見えただなんて、言える訳もなく……。  ぐったりした心と体で待合室に戻ると、愛しそうにエコー写真を見ている妊婦たちがいた。いずれも母性が芽生え、幸福感で満たされている。どうして? どうして、私の中では母性が芽生えないの? いたたまれず、私は逃げるように病院を後にした。 「確かに、エイリアンだ。人間に両脇に抱えられる火星人と同じフォルムをしてる」  その日の夜、帰宅した夫に胎児のエコー写真を見せると、彼は私に同調し、笑い飛ばしてくれた。また、研修先のアメリカ土産として、スタイリッシュなマタニティワンピを渡された。先日のこと、覚えててくれたんだ……。ところが――
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