プロローグ

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プロローグ

 いにしえの彼女が言った。「一つ一つの悲しみには意味がある。時には思いも寄らない意味が。どんな悲しみであろうと、それはこの上なく大切なもの。太陽がいつも朝を連れて来てくれるように、それは確かなことよ」  大切な意味って何? どんな意味があろうと、悲しみなんか断然、受取拒否である。できることならから、その意味ごとソッコー返品したい。人間はそんな強くないから。太陽だって、きっと朝なんか連れて来たくない夜も、いつまでも月を見ていたい夜もあるはずだ。今を生きる私は悲しみの中、いつも思う。朝なんか来なければいいのに……。
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