犬嫌い

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僕、犬飼ハジメはペットショップ【Pe-Pet(ピペット)】の新人アルバイトです。 オープン1時間前、朝9時から一番乗りで動物たちのお世話をしてます。 「おお、よしよし!ご飯まではもう少し待っててね!」 犬や猫たちの鳴き声が響き渡る店内バックヤードで、まずは犬舎の掃除からです。 一つ一つ、丁寧に消毒や掃除をしていきます。 ―ガチャ バックヤードの扉が開いて、先輩が入ってきました。 このお店のチーフトリマー(犬の美容師)、一条さんです。 「おはようございます、一条さん!」 「ああ、おはよう。早いね。」 黒髪を束ねた、いかにも仕事の出来る人って感じの雰囲気ですが、人当たりの良いとても尊敬出来る先輩です。 ある一点を除けば。 ―ワンワン!!ワオオ!!ワンワワオン!!オオ!!ワワン!!ワウワウ!!バオオン!!ワオン!!ワンワンワン!!ワオオ!!バウワウ!!オオン!!ワオン!!ワンワン!!ワウワウ!!ワン!!ワウウ!!ワワワン!!ワワオン!!オオン!! 長く勤めている一条さんが来たことで、お店の犬たちが更に大きく吠え出しました。 こうなると、一条さんのその一点が出てくるのです。 「・・・クソ犬どもが」 一条さんは舌打ち混じりにそういうと、トリミングルームへ行ってしまいました。 そう、あの人は大の犬嫌いなのです。 ◆◇◆ お店がオープンしてすぐ、お客様がいらっしゃいました。プードルを連れた、トリミングのご予約のお客様です。 「一条サン!今日も宜しくお願いネ!」 ―キャン!!キャン!!キャン!! 「はい、かしこまりました。いつも通りのカットで宜しいですか?」 ―キャン!!キャン!!キャン!! 「もうネ、うちのコったらこんなに元気だしとっても動きやすいようにしてほしいの。でもツルツルは可愛くないからフワフワにして、それから・・・」 ―キャン!!キャン!!キャン!! 犬の声が大きすぎて、僕の方まではお客様がどんな注文をしてるのかわからない程でした。 それでも一条さんは笑顔でお客様との話を進めていきます。 15分程して、ようやくお客様は犬を預けて一旦お出掛けになりました。 「結構長く話してましたけど、難しい注文だったんですか?」 僕がそう尋ねると、一条さんは眉間にシワを寄せつつ答えてくれました。 「いつも通りだって。というかあの人、いつも同じ注文しかしないよ。」 「え?」
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