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少し苦く笑う先生の顔を見て、わたしは改めて過去のことを振り返る。
「そう……だった、かしら?」
確かに言われてみれば、わたしが先生をプロポーズした後、周囲の人達はすぐに婚約させた。
その後はわたしも先生も、お互いを婚約者であり、将来結婚する相手だと自覚していたら、先生からプロポーズをされなくても大して気にはならなかった。
愛の言葉は毎日二人っきりの時には口に出していたし、彼の気持ちは疑いようもなかったから……。
「実は私も、季姫さんにちゃんとプロポーズをしていないことで悩んでいたんです。気付けばすでに結婚の準備に取り掛かっていましたし、言うタイミングが見つからなかったもので」
「そう……だったの。そういうところはやっぱりちゃんとしたかったのね」
「それはそうですよ。一応私だって、大人の男ですからね」
まあ女性も普通は気になるだろうけど、わたしはまた別のところが気になっていたからなぁ。
先生の人生をこのままずっと、一人占めしていいのかどうか。
グルグル悩み過ぎて、他の事なんてあまり考えられなかった。
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