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ちゃんとした恋愛感情はあるのに、結婚という儀式に心が浮き立たないのは…。
周囲の人達からはかなり祝福されているし、同級生からは羨ましがられている。
初恋相手と結婚できるなんて、憧れの対象となるらしい。
しかも相手がずっと側にいて、尽くしてくれたのだから、普通は文句がないはずなのに…。
「あ~もう! グダグダぁ」
ウエディングドレスのカタログを、思わず宙に放り投げた。
オートクチュールのオーダーメイドのカタログ。
わざわざパリに行って、サイズを測った。
そしてデザイナーに似合いそうなウエディングドレスをいくつか作ってもらって、その中から着るのを決めなきゃいけないのに…。
…見てもあんまり喜べないとはこれいかに…。
「お嬢様、失礼しますよ」
扉をノックし、入ってきたのは先生。
しかしベッドに腰をかけ、床に散らばったカタログを見て、眉をひそめた。
「…どうしたんですか? デザインが気に入らなかったんですか?」
「ん~。イマイチ、ときめかない」
「だからといって、投げてはいけませんよ」
先生はため息をつくと、カタログを拾い上げる。
「先生は衣装、決めたの?」
「私はお嬢様のドレスを見てから決めますから」
先生の衣装もわたしがオーダーしたところと同じところで、注文していた。
先生用のカタログもある。
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