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わたしは指輪をケースに入れて、机の引き出しにしまった。 先生とお風呂に入るのも、3歳からだった。 だから今更、照れも恥ずかしげもない。 わたしの部屋にあるお風呂は、一階にある大浴場よりは狭い。 けれど大人3人ぐらいは余裕で入れる広さがあった。 わたしはバラの花びらが浮かぶバスタブの中、先生に後ろから抱きしめられていた。 いわゆるラッコ抱っこ。 先生の大きな体に、わたしの体はすっぽり包まれてしまう。 「良い匂い…。今日はバラなんだ」 「ええ、リラックス効果がありますし」 そう言いながら、手でお湯をすくってはわたしの首や肩にかける。 「ねぇ、先生。義兄さんから言われたんだけど、新婚旅行はどこにする? と言ってもあんまり期間はないんだけどね」 春は何かと忙しくなるので、あまり自由な時間は少ない。 けれどせっかくの新婚旅行は、ちゃんと行きたかった。 「お嬢様はどこが良いですか?」 「ん~そうね。でも外国は厳しいかもね。行って帰ってくるだけで、バタバタと慌ただしいだろうし」 「そうですね。せめて一週間ぐらいでしょうから」 「一週間…。いっそ日本国内にする? それなら移動距離、どんなに遠くても半日もかからないでしょう?」     
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