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「きゃっ! ちょっちょっと待ってよ!」 いくらワンピースに着替えたと言っても、まだ春先は肌寒い。 けれど上着を着ることもなく、わたしは先生に抱っこされたまま、駐車場まで連れてかれた。 …その間、周囲の視線が突き刺さりまくった。 けれど先生はケロッとしている。 先生の愛車の前で、ようやくわたしは下ろされた。 そして助手席のドアを開けられる。 「どうぞ、希姫お嬢様」 「はいはい」 わたしは先生の車に乗る時は、いつも助手席だった。 他の人が運転するならば、後部座席。 コレは信頼している証と言っても良い。 助手席に乗り込み、シートベルトをすると、先生は運転席に乗った。 「別にお姫様抱っこしなくても、逃げはしないわよ?」 「分かっていますよ。ただ私がしたかっただけですので」 …やっぱりよく分からない。 年がら年中引っ付いて、くっつきまくっているのに。 「ねぇ、行き先を教えてよ」 「到着したら分かりますよ」 「…それまでに教える気は一切ないのね」 「察してもらえると嬉しいですよ」 何を考えてんだか。 でもこうなった先生は、どんなに問いかけても答えてはくれない。 あんまりしつこいと怒らせるだけだし。 わたしはため息をついて、外に視線を向けた。     
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