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「ちなみにコレだけは教えて。荷物も向こうに移動変更しているのよね?」
「ええ。送る時に、そう手配しました」
そう言えば、荷物を送ったのは先生だっけ。
わたし達は身一つで行けるようにと、大きな荷物は宿泊先に前もって送っていた。
ならとりあえず、安心だ。
車で移動するなら、そう遠くはないだろうし。
安堵すると、欠伸をしてしまう。
「眠っていても構いませんよ」
「んっ…。悪いけどそうするわ」
ここんとこ、寝る時間がほとんどなかった。
メイクで寝不足を隠すのが難しいほど、今はヒドイ顔をしているだろう。
「じゃあ…オヤスミ」
「はい、オヤスミなさい。お嬢様」
―そうしてどれほど時間が経ったのか。
「…さま、希姫お嬢様」
「んっ…んん~」
わたしは先生に揺さぶられ、目を開けた。
「あっ、到着した?」
「ええ」
目をパチパチさせながら周囲を見ると、暗くてよく見えない。
披露宴が終わったのがもう夕方だったし、今は夜中と言える時刻になったんだろう。
「立てますか?」
「ええ、自分で歩くわ」
車の外に出ると、周囲は真っ暗だった。
街灯がいくつかあるぐらいで、周囲には木がいくつも見られる。
「ここ…山の中?」
「ええ、まあ。こちらです」
そう言って先生は歩き出す。
土道を歩くこと数分、一件の家の前で立ち止まった。
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