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「朝食を食べ終えましたら、案内した場所があるのですが、よろしいですか?」
「その為にここに来たんでしょう? 良いわよ」
わたしにとっては見知らぬ土地。
勝手が分からなければ、どうやって行動するかも分からない。
だからここは素直に先生に任せよう。
どうやら意味があって、ここに来たみたいだし。
わたしはフォークを握り直し、口の中にオムレツを詰め込んだ。
「別に急がなくても良いですよ。時間はたっぷりありますし」
そんな様子を見て、先生はクスッと笑った。
うっ…。子供っぽいって思われた。
「でも天気が良い時の方がよくない? 山の天気は変わりやすいって言うし、晴れている今がチャンスなのでは?」
「まあそう言われるとそうなんですけどね」
「じゃっ、ちょっと待ってて。すぐに食べ終えるから」
「お嬢様、いくら二人っきりだからといって、気をゆるめ過ぎです」
「良いじゃない。こういうの、夫である先生の前でしかしないんだから」
二人で穏やかに笑い合う。
…うん、こういうの、良いな。
いつもは広いリビングで先生と二人っきりで食事をする。
けれど同じ部屋の中にはメイド達が数人控えているし、あまり緊張が解けない。
まあ慣れているから、食がすすまないというほどでは無いにしろ、気は休めないものだ。
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