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「ですが季姫さんが私のことで悩んでいることには気付いていましたし、混乱させるのは不本意でしたから。落ち着くまで黙っていようかと思っていましたが、タイミングが今だと思いましたので」 「どうして今だって思ったの?」 「季姫さんが私にプロポーズをしてくれた場所と、ここがよく似ているからです。あの時もタンポポ畑の中でしたから」 「ああ、そうね」 「なので改めて私の気持ちを伝える場に、相応しいと思ったんですよ。……どうです? 少しは迷いが晴れました?」 そう言いつつ先生は、わたしと額を合わせる。 間近で見る先生の眼は、春の日の光のように暖かく柔らかだ。 その眼を見ているだけで、わたしは落ち着いていく。 「……ええ。わたし、先生と結婚できて、嬉しいわ」 素直な気持ちを伝えると、先生は何故かキョトンとする。 「貴女という人は……。私よりも十五も年下なのに、いつも先回りをするんですね」 「そうかしら?」 「ええ。自覚がないのかもしれませんが、貴女は私よりもしっかりした方です。なので自分を下に見ることは、もうお止めください。貴女は私が人生全てをかけて、愛する人なんですから」 ……いや、どう考えても先生の方が大人だ。 「はあ……。分かったわ。もういろいろと悩むのは止めることにする。考え過ぎたって、良いことなんてないしね」 「そうしてください。これからは悩む暇なく、私に愛されるのですから」     
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