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「…ねぇ」
わたしはその光景を見て何を思ったのか、先生の首に自分の腕を巻きつけた。
「何ですか?」
「わたしにも」
そう言って、唇を尖らせた。
…今思い出すと殴りたい、当時の自分。
先生は察したようにニッコリ微笑み、わたしの唇にキスしてくれた。
軽く弾むようなキスだったけど、心がとってもあったかくなった。
「…えへへ」
「いけないコですね、お嬢様。私以外の人間にはしてはいけませんよ?」
「おにいちゃん以外の人に、したいなんて思わないもん」
いや、先生でも躊躇おうよ! 当時のわたし!
「それで良いんです。さて、と」
先生はわたしを抱き締めたまま、立ち上がった。
「善は急げと言いますしね。早速、両親に言ってきますか」
「何を?」
「もちろん、あなたと私の婚約をですよ」
そう言う先生は、とても嬉しそうだった。
―回想、完了。
それから、互いの両親は笑顔で婚約&結婚を認めてくれた。
どうやら親同士で、そういう話は前々から出ていたそうだ。
でもわたしはまだ幼かったし、せめて中学に上がる頃までは言い出さないつもりだったらしい。
けれど当人同士がその気ならば問題ないと、喜んで準備を進めた。
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