前編

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別に行きたい高校なんて無かった。だから僕は周りの言う通りに県内で有数の進学校を受験した。受かりたいという気持ちがあまり無かったからか、受験当日も緊張は全くしなかった。丁度、僕たちの代は平均点が例年より低く、240点程だった。僕は受験後、すぐに帰宅して解答速報を見るためにテレビの前にいた。自分の解答を思い出しながら、テレビに映し出される答えと頭の中の答えを照らし合わせた。自己採点の結果、400点近く取れていたのでその瞬間合格を確信した。嬉しさはあまり無かったが、親に払わせた塾の金が無駄にならなかったのだけは安心した。合格発表も2、3時間遅れで見に行った。自分の受験番号は当然あった。周りの人は笑ったり喜んだり泣いたりしていたが、僕の表情が変わることは無かった。基本、僕は物事に感情を左右されることが人より少ない。だから受験というイベントで一喜一憂出来る周りが羨ましかった。何をやるにも無気力だった。いつからそうなったかは分からない。本当にいつの間にかだった。
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