姉さんのこと。

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準備しておいた枝切り鋏を取り出す。あらかじめ刃を研いでおいたので一撃で切ることができる。 姉の棺の蓋をあける。 冷たくなっているが、そこには登校の時につないだ姉の手がある。 温かい手をつなぐことは叶わなくなってしまったが、それは贅沢というものだ。 胸の上に組まれた手を外す。少し苦労したが、組まれた二つの手を離すことができた。手をつなぐためには手首から先さえあればいい。 姉さん、もうじき手をつなぐことができるよ、いつまでも。 僕は左利きなので右手はいらない。 止血の準備は既にしてある。一瞬が勝負だ。 切り取った僕の右手を姉の左手に組ませて棺の蓋を締める。 これでいつまでも一緒だ。いつまで手をつないでいよう。 姉さん……
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