姉さんのこと。

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大学四年になって卒業に必要な単位のほとんどを取ってしまった姉は週に一度しか大学に通うことはしなくなり、姉と一緒に手をつないで通うという僕の夢は潰えてしまった。 しかし、僕は諦めることはしなかった。姉と一緒の会社に入れば、姉と一緒に手をつないで通うことができるのである。 姉がどこの会社に入るのか、それが決定したら僕もその会社に入るための準備を行うのだ。 やがて就職活動の時期が訪れた。できれば僕が入社しやすい会社を選んでくれればいい。と思いつつ、それが可能かどうか、つまりどうやったら姉が僕の理想とする会社を選んでくれるのか考えていたのだが、姉は一向に就職活動をしようとしない。 年が開けて数ヶ月で卒業という時期になっても姉はのんびりしている。会社はどこにしたのとは聞くに聞けないままもやもやとした日々がしばらく続いたのだが、やがて姉は一人の男を家に連れてきた。姉は卒業すると同時に結婚するのである。 もう、姉と一緒に通うことはできない。 失意の中、姉が突然、交通事故で亡くなった。 犯人は見つからないまま姉の遺体だけが家に帰ってきた。 お通夜が終わり、弔問客も帰っていった。この部屋にいるのは僕と姉さんだけだ。父と母はぐっすりと眠っている。お茶に入れた睡眠薬が効いたのだ。 ようやく姉さんと手をつなぐ最後のチャンスが訪れた。     
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