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「……あんまり、怖いことしないで欲しいけれど」
「まあ、大丈夫だろう。暫く、人間なんてみたくなくなるくらいには、懲らしめてくれるようには頼んで置いたけどな」
「……」
東雲さんは静かに怒っている。こういう時は黙っておくに限る。私は、ずず、と茗荷の味噌汁を飲み込むと、ご機嫌のナナシを見つめた。
「うっふふふー! 絡新婦の銀糸! 中々レアなのよ?! いっぱい手に入ったから、反物にしましょう、そうしましょう!」
ナナシはそう言うと、ちゃぶ台の上に頬杖を着いて、仲良くご飯を食べている水明とクロを眺めた。そして何かを思いついたのか、いきなりぽん、と手を叩くと、こんなことを言い出した。
「そうそう、あんたたち。これから一緒にいるんでしょう? なら、うちに来なさいよ! この家じゃあ、クロちゃんまで一緒だと手狭でしょう。それに、水明ちゃんは薬にも造詣が深いでしょう? 手伝ってくれると嬉しいわあ。夏は馬鹿が暴れることが多いから、薬屋も忙しいのよ」
すると、水明はちらりと私の方を見た。
確かに、水明が今使っているのは、我が家の客間だ。そこは、普段は遠方から来る客が使用している部屋なので、これから来客が来たら困るのは確かだ。
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