富士の大あやかし

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 暗い中起きてくるのは、現世(うつしよ)に住んでいた者にとっては辛いのだろう。 「隠世の朝は暗いものね。わかるわー。私も、高校生の時は現世で暮らしていたんだけどね、戻ってきた時の違和感が半端なかったもの」 「……お前、高校を卒業していたのか」 「そうよ。今、22歳だし」 「……22」  すると、水明は目眩がするのか、目頭を指で揉み始めた。  ……どうしたのだろう。はっ!? もしかして私ってば、もっと大人の女性に見えていたのかしら……!? 水明は、私の内から放たれる眩いばかりの大和撫子感に惑わされたに違いない。  私はバシバシと水明の背中を叩くと、洗顔用のタオルを手渡した。 「ふふふー! ほら、顔を洗ってきて。裏の井戸……場所、わかる?」 「痛い。やめろ。……そう言えば」  その時、水明は轟音を立てて動いている洗濯機をちらりと見て、ぐっと眉根を寄せた。 「……ここ、電気は通じているのか?」  私は、そんなことかと肩を竦めると、さっと目を反らした。 「現世の皆様には、大変お世話になっております」 「……盗電!?」 「だって、発電所なんてないもの!! ええい、さっさと顔を洗ってらっしゃい!」     
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