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すると、ふと誰かに声を掛けられて、その存在に気がついた。我が家の狭い縁側に、誰かが座っている。それは、あの烏にそっくりな濡羽色の髪を持った青年だ。瞳は透き通るような金色。目尻は眠そうにとろりと下がっていて、黒地に菊の柄の着物を着ている。私は見知った顔に頬を緩めると、さっと手を上げて挨拶をした。
「金目、いらっしゃい。銀目は今日も元気だねえ」
「ウキウキで朝一で突撃訪問したら、この裏庭に見知らぬ雄がいたから興奮しているみたいだねえ」
「そりゃあ大変だ」
私は縁側に腰掛けている金目の隣に座って、今も格闘しているふたりの姿を眺めた。
金目は、あの水明に襲い掛かっている烏の双子の兄だ。ふたりと私の付き合いはかなり長い。彼らとの出会いは、私が7歳の頃。傷つき、親から見捨てられた双子の烏の雛を助けたのが切っ掛けだった。何の因果か、普通の烏ではなく、あやかしの烏天狗に成長した彼らは、こうして今でも私と親しくしてくれている。所謂、幼馴染と言うやつだ。
いつもにこにこしている、のんびり屋さんの金目。
勢いに任せて、馬鹿なことばっかりするやんちゃな銀目。
ふたりの中でも、特に銀目は私に懐いていて、良く遊びに来てくれる。
私にとっては、かわいい弟分だ。
「銀目、いい加減にしないと怒るよー」
「……はっ!?」
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