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銀目は、私が来たことに気がつくと、ぱっと水明から離れて、空中で人間の姿に変化した。双子だけあって、見た目は金目にそっくりだ。けれど、目の色が銀色なことと、目尻が釣り上がっていること、それと着物の紋様が流水紋だというところが違っている。
銀目はニコニコ顔で私の傍に寄ると、元気いっぱいに挨拶をした。
「夏織、おはよう! 今日も元気か?」
「元気だよ、銀目。君も、相変わらず元気そうだねえ」
「うん。俺は元気だぞ」
……ああ、銀目の背後に、激しく振られている尻尾が見える気がする。
銀目は照れくさそうにはにかむと、次の瞬間にはじろりと水明を睨みつけた。水明は、頭や顔から血を流して、げんなりした様子だ。
「で、夏織。あれは誰」
「水明って言うのよ。昨日から、うちに居候することになったの」
「い、居候!?」
すると、銀目は途端に慌てだして、あわあわと金目に視線を投げた。すると、金目はふむと腕を組んで、冷静に私に尋ねた。
「……あれが、例の大通りに唐突に現れた人間? 稀人が落ちてくるのは、随分と久しぶりのことだね」
「あれ、もう噂がそっちに行ったの? 相変わらず、隠世の皆は噂好きだねえ。なんかね、隠世にあやかしを探しに来たんだって。拠点が欲しいからって、うちに滞在することになったの」
「東雲は承知しているんだよね?」
「勿論」
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