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すると、さっと銀目の顔が青ざめた。ブツブツと「親公認……!」なんて呟いている。私は首を傾げると、憮然とした表情でこちらを見つめている水明に近寄った。
「ありゃりゃ。こりゃ、随分とやられたね。昨日の傷も開いちゃったんじゃない? 薬を貰いに行かなくっちゃ」
「……これくらい、かすり傷だ」
「駄目よ。放って置いて、変に化膿でもしたらことだわ」
そっと、傷のひとつに指先で触れる。すると、痛むのか水明は整った顔を顰めた。私はふふん、と得意気に笑うと、朝食の後に薬屋に行くことに決めた。
すると、水明はちらりと銀目を見て、片眉を上げた。
「まあ、薬屋とやらに行くのは別に構わない。余所者だからな、攻撃されることもあるだろう。それよりも、そこの烏。そいつは、礼儀知らずにもほどがあるな。俺が客人だと理解しても、謝罪のひとつもないようだが」
「――あぁ!?」
銀目は途端に顔を顰めると、水明に詰め寄った。銀目は、水明よりも頭ひとつ分身長が大きい。けれど、水明は体の大きな銀目に見下されても尚、気圧されることはなく、じっと見返している。すると、銀目は少し気まずそうに唇を尖らせると、ぽつりと呟いた。
「……謝れば、気が済むのか」
「――まあ、気が済むな」
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