閑話:あやかしの夏

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 夜を越える度に、蝉の鳴き声は大きくなっていき、日中の暑さは増していく。  いよいよ夏本番を迎えた隠世は太陽がないからか、現世の――特に、都内のうだるような暑さに比べれば、どうってことはない。けれども、はつ(・・)と佐助の棲み家の森はそうはいかない。  燦々と降り注ぐ真夏の太陽。  熱風と化した夏の風が頬を撫でて、高い湿度が汗を噴き出させる。そんななか、冷房ひとつない屋外で、連日読書するはめになっている俺たちは疲れ切っていた。  それなのに、はつ(・・)と佐助は元気いっぱいだ。  本を自分の周りに積み上げて、興奮気味にページを捲って、額を突き合わせて内容を語り合っている。 「すごいや! おならで空を飛ぶの……!? 僕も飛べるかなあ」 「きっと飛べるわ! お芋をいっぱい食べたら、ぷーって!」 「やってみよう!」 「ちょ、待って! 佐助、脱がないの!! おならで空は飛べません!」  夏織は自由な子どもたちに翻弄されて、大わらわだ。慌てる夏織を見て、ふたりは朗らかに笑った。  そして、佐助は何を思ったのか、俺に近寄ると手にした本の挿絵を見せてきた。     
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