エピローグ あやかし世界に生きている

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エピローグ あやかし世界に生きている

 真っ白な炊きたてご飯を、米粒を潰さないように優しく握って、具材は定番のものを入れる。昆布の佃煮に、鮭に明太子に梅干し。それに、変わり種をひとつ。 「うおおおお!! うめえ……!! 唐揚げと玉子焼きが入ってる!」 「美味しいでしょう! ぐうたらな東雲さんのために開発した、おかず入りのおにぎり!」 「オイラ、こんなに美味しいの初めて食べたよおおおお!」 「こら、クロ。急いで食べると、喉に詰まる……ああっ! 毛に米粒が!」  お皿に顔を突っ込んでがっつくクロを、隣で水明が甲斐甲斐しく世話を焼いている。  私はそんなふたりにお味噌汁を出しながら、小さく笑った。  ――水明とクロの活躍によって、絡新婦は捕獲された。  他のあやかしに比べると、凶暴性が強い絡新婦は放っておくとまた誰かに害を加えかねない。隠世には警察なんてものはないから、こういう状況の時は個々人が対処するしかないのだけれど、絡新婦が私に害を為そうとしたことが周囲に知れると、うちの店の強面の常連さんたちがどこかに連れて行ってしまった。  流石に、生命を獲るとまではいかない……と信じたいけれど、海座頭がすごく怖い顔をしていたので、どうなることやら。     
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