あの子

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11月になった。 風の冷たい夜だった。 あの子は電柱の下にいた。 うずくまっていた。 「帰らないの?」 「帰るところがないの」 「困ったね。今夜は冷えるよ」 「困ったな」 人懐っこい子だった。 一度顔見知りになると寄りかかって甘えてきた。 「ついておいで」 歩いて1分。 うちの玄関前に着いた。 ドアを開けた。 入りそうで入らない。 「無理にとは言わないよ。入りたければ入ればいいし、出たければ出ればいい。」
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