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依頼の期限までにはまだ時間はある。
だから俺は町の外まで歩きで向かう。
「あらヴェディちゃん。今日はどこに行くの?」
「ゼラおばさん、おはよう。俺は今から仕事に行くんだ」
「お仕事というと組合の依頼かい?」
「そう。ちょっとバジャム山辺りね」
「そうかいそうかい。ならこれを持っていきなさい」
ゼラおばさんは二つ持っていた紙袋の一つを俺に渡した。
温かい…焼き立てパンの匂い…。
中を確認してみるとやっぱりパンだった。
ゼラおばさんのパンは文句なく美味しい。
「ありがとゼラおばさん、今日の昼に食べるよ」
「ヴェディちゃんは美味しそうに食べてくれるからね、あたしも嬉しいよ。帰ってきたら家においで。パイを焼いてあげる」
「ほんと!?やった」
「気を付けて行ってくるんだよ」
「分かってる。ありがと!」
パンをもらった俺はゼラおばさんと別れてまた歩き始めた。
道中に会った知り合いに挨拶を忘れず。
そして町の外にほど近い辺りに差し掛かったところでまた声を掛けられた。
「ディー坊!」
「ん…?あ、ラベデのおっちゃん!」
「昼間っからウロウロして暇なのか!」
「ちげーし!今から仕事だし!」
野菜売りの無駄にガタイの良いラベデおっちゃん。
6年程前まで組合で働いてたおっちゃんだ。
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