井上勇樹の想像記 2

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つづいて、業間休み。 一輪車をのりこなすぼくを、Aちゃんが遊びそっちのけで見つめている。 (現実?きかないでよ、そんなの。ぼくの体育の成績は平均以下のうえに何につかまっても一輪車ができなくて、Aちゃんの視線はBくんにむきっぱなしなんて、悲しくて言えないよ。) 三時間目は理科。 実験を正しい方法で成功させるぼくに、Aちゃんは熱い視線をむけた。 (現実?きかないでよ、そんなの。ぼくの理科の成績は平均レベルでAちゃんの視線はBくんにむきっぱなしなんて、たとえ信頼できる相手でも言えるわけないじゃないか。) 四時間目、学活。 どんどん手をあげて素晴らしい発言を連発するぼくを、Aちゃんは目をハートマークにしてみつめている。 (現実?きかないでよ、そんなの。ぼくの学活の成績は平均レベルで自分から手をあげたことは一度もなく、先生に指されても普通のアイデアしか言えないなんて、神に誓っていわないよ。) 給食はとばして、掃除。 昇降口掃除のぼくはほうき係を希望したんだけどあまりの人数にジャンケン大会になり、一方的に負けたぼくは下駄箱係を押し付けられた。 で、仕方なくやっているとぼくの下駄箱に手紙が入っているのが見えた。 差出人はAちゃん。 『昼休みになったら屋上にきてください。』 とかいてある。 (現実?きかないでよ、そんなの。ぼくに対する女子の評価はゼロに近く、下駄箱の中のラブレターすら一度ももらったことがないなんて、死んでもいうもんか。) そして、昼休みになった。     
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