井上勇樹の想像記 2

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屋上にいくとすでにAちゃんは来ていて、ぼくを見ると顔を赤らめながら言った。 「あ、あの……わたしと、付き合ってください!」 ぼくは、クールな顔でうなずいた。 「ほんと!…ありがとう!」 感激したAちゃんがぼくにだきつく。 ぼくもAちゃんをだきしめかえした。 次の瞬間……。 「こらあ!!」 という大声と、脳天へのすさまじい三連続の衝撃に、ぼくは現実(つまり、学校の廊下)にひきもどされた。 現実(つまり、学校の廊下)にひきもどされたぼくは、まず頭をさすった。 三つの巨大なこぶができている。 そして、視界の端に先生のこぶし。 ぼくはこの段階ですべてがわかった。先生に殴られた……。 それと同時に、なぜ大声をだしたわけでもないのにこんなことになったのか疑問に思う。 しばらく考えて答えをみつけたぼくは、あまりの恐ろしさに顔から血の気がひいた。 あわてて先生の体から手をはなしたけど、もうおそい。 すでにかなりの数の生徒が人だかりをつくり、こそこそ話している。 「井上、先生にだきついたんだってさ。」 「気色悪くね?」 「最悪ぅ~。もう井上君に関わりたくないわ。」 「おれも井上と遊ぶのやめよ。」 ぼくはこそこそ話を聞きながらあたりをみまわし、Aちゃんを見つけた。 さっとBくんの後ろにかくれるAちゃん。 ……ぼくは、悲しい。     
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