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もう終わりだと観念して、私はペットボトルのミネラルウォーターを飲んで外出の準備をはじめる。
透明なペットボトルに入ったミネラルウォーター。フランスのエクスレバン市で採水された鉱泉水。
まったく濁りのない綺麗な水だ。
しかし私には命を削る毒にしか見えない。
ここにもたっぷりと含まれているのだ。
いや、こんな小さな器だけじゃない。
閉め切ったカーテンの隙間から日光が差し込んでいた。薄暗がりを切り裂く光。ほこりがきらきらと輝いていた。
喉を通り抜けたミネラルウォーター、鼻孔から吸い込む空気、すべてにたっぷりとあれが含まれているのが意識させられて絶望する。
からだいっぱいだ。
もうこぼれ出しそうだ。
ただの噂?
馬鹿な。
そう言って笑っていた父も母も死んでしまった。
からだいっぱいにあれを詰め込んで。
火葬場で焼かれた二人のあの臭いを私は忘れない。
からだいっぱいに詰まったあれが焼け焦げた臭い。
開けた口から、あれがドボッと出てきそうで手でふさぐ。
きらきらと輝くほこりから逃げるように部屋を飛び出す。
左手に冷たい金属を持って。
今は金属の硬さと冷たさが心地良い。
握ったドアノブもあれ塗れで鳥肌が立つ。
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