からだいっぱいの

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それだけじゃない。 海水から生産される食塩はマイクロプラスチックの宝庫だ。 特にプラスチックの海から生産される国産の塩にはたっぷりと含まれていて、私たちを満たしてくれた。 私を人々が遠巻きに取り囲みはじめた。 警察に連絡した、とスーツ姿の男が言った。 そんなことはどうでもいいのに。 そんなことよりも、からだいっぱいのこれだ。 ペットボトルの内側では目に見えないマイクロプラスチックが剥がれ落ちた。カーペットも化繊の毛布も私たちを満たしていく。 マイクロプラスチックは物理的異物としてだけでなく、吸着した汚染物質の媒介役としても人間を害した。 様々な汚染物質、化学物質がマイクロプラスチックに吸着して人間に取り込まれた。 それらは内分泌撹乱物質として生殖機能を低下させ、奪い去る。 水を飲んでも空気を吸っても、魚を食べても寝ても覚めてもどこにいても、私たちはプラスチックで満たされる。 だから服も着られないし寝られないし何もできない。 からだいっぱいのプラスチックが私のなかをぎゅうぎゅうにして、肺も胃も腸も子宮もいっぱいだ。 どこにも隙間がない。 隙間がないとダメなんだ。 みんな笑うな。 噂なんかじゃない、本当のことだ、からだがいっぱいだ。
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