からだいっぱいの

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ぷっ、ぷっ、ぷっと私に穴が開く。 赤い穴から血とプラスチックと黄色い脂肪が流れ出す。 あえぎながら息を吸い込むと、また体にプラスチックが入り込み、私をいっぱいにする。 取り出さなきゃ、体からプラスチックを出さなきゃ、赤ちゃんが産めなくなる、体から出さなきゃ! 息を吸う喉めがけ、ナイフを力いっぱい突き刺した。 ぶちんっ、と太い音がして何かが断ち切られた。 口と喉元から真っ赤なものが溢れ出す。 そこでようやく私は安らいだ。 からだいっぱいのものが、出たよ。 きれいなからだになったよ。 隙間ができたよ。 だから。 誰かが私を愛してくれるはず。 誰かが入り込む隙間ができたから。 血だまりに倒れ込む。 流れ出たプラスチックと血液は温かく、私はからだいっぱいにそれをまとわせて目をつむる。 いまは嫌な噂なんて忘れて少し眠ろう。 ほんの少しだけ眠ろう。
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