第2章   半人前なりに

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第2章   半人前なりに

今朝のぼくは閉め切った押入れの布団の層の中に潜り込んでねむっていた。何でそんな所にいるのかって? ぼくはいつも、寝相が悪いと言われる。修学旅行に行ったりすると必ずだ。起きた時に寝床にいることはまずない。だがそれは断じてぼくのせいだけではない。 だって物ごころつく前から、起きてすぐ……というか、起きるのはいつも……このように襲われている時だからだ!  襖越しに突き立てられた刃が布団に突き刺さる。その刃をぼくは厚い手甲(てっこう)で覆った掌で掴み、そのまま襖を蹴り開けた。手甲(てっこう)はアームカバーによく似た忍び装束の一つだ。通常腕から手の甲までを覆うものだが、黒影流のは特別仕様で、掌部分には特殊な素材を使い、刀では切れないよう硬い鎖を縫い込んである。  襖向こうにいた人物が間髪いれず飛び出したぼくの体重で押し倒される。ぼくは刃を掴んだままだ。曲者は刃を離して襖の下から逃れようとする。ぼくはその手首を足でぐっと踏みつける。素早く体を返して畳の上へ。曲者の手首を掴んで引きずり出した。 ぼくは彼の腕をつかんだまま言う。 「おはようございます、大鴉(おおがらす)先生」 「いてててて……少しは手加減というものを知りなさい」 「そう言う先生はどうなんですか?」  ぼくは襖に突き刺さった鋭利な刀を引きぬいて眺めながら言う。角型の鍔は厳めしく、柄には銀燻しの藤の花の目貫が光る。侍が持つ打刀より少し短い。忍び刀だ。刃渡りおよそ55センチ、ぼくといえども刺さってたら死んでるな。  手加減するわけないでしょう。と言いながら大鴉(おおがらす)はぼくが離した腕を痛そうにさすった。今日は学校で見るスーツではなく、忍者の正装である紺色の装束だ。目だけを出して顔と髪まで全て覆い隠し、首にはマフラーをぐるぐる巻いている。
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