第8章   対決

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「それはそうなんだけどさ……っていうか、義理とかそんなもんでここまでつきあえる……わけが……」 「なに?」  何言ってるのかわからない。ぼくはみけんにしわを寄せた。鷹村はこぶしを握りしめ、意を決したように俺を見据える。 「じゃあ言う。言ってやる」 「おお。なに。何でも聞くよ」  ぼくは腕組みして鷹村を見上げた。 「待遇改善の提言か? それとも給料未払いへのクレームか。なんだって受け止めるからどうぞ」  不肖頭領としての、それが務めだ。  鷹村は焦ったようにじりじりしながら口を開く。 「違……お、俺! お前が!!」  はい?  「……言えね~~~~!! もうこのにぶちんとんちき社長、誰かどうにかしろよ~!!」 鷹村は頭を抱えると空に向かって謎の雄たけびを上げた。ぼくは腕組みのままキレる。 「はぁ!? 誰がとんちきだよ、言いたいことがあるならさっさと言えよ」 「ねぇよ!」 「ないのかよ!? なんなのおまえ!?」  ののしりあっていると、わやわや騒ぎ始める声が聞こえ始めた。 「このぶんじゃ100年経っても言えないにゃ」 「(からす)の13年の執念が先か、タカの若さが先か……賭けますかね」 「あたしは執念の男、(からす)に一票入れるわぁ」 「なんでもいいから早くやっちゃえ~」  ちっさな声が木陰から聞えてくる。 「何だお前ら!?」 ぼくと鷹村は目を剥いた。伯爵がティーカップを持って桜の木陰から顔をのぞかせる。 「花見見物……ならぬ青春見物なのです」 「あたしには甘酸っぱすぎるにゃ」  どさどさと木の枝から猫娘が降って来た。幽霊がふら~っと河原の土手の下から登ってくる。 「ちょっとあんたら……つけてたね!?」  ぼくが怒鳴ると、皆にょほほほと笑った。なんでもいいけど笑い方が変だぞ!!  向うから黒い影がはやてのように走ってくる。 「藤林 (はやと)!! たとえ最終日といえども、サボりは許しません!!」 「からす!?」  ぼくは思わず目を見開いた。鷹村はまたぼくを抱えて走りだす。 「やれやれ~~~!」 「追え~!!」  無責任な声がはやし立てる中、ぼくは目を閉じる。  夏が近づいていた。 (了)
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