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俺たちがいるのは、背丈より高い茂みに囲まれた空き地だった。高々と背伸びした枯草に蔓が巻き付きバリケードのようになって、年の瀬の冷たい風が吹いている。ここに来るまでに道はなく、覆いかぶさるように視界を塞いでくる草木をかき分けないといけない。街を見下ろす山の中腹にあって人なんかほとんどやって来ない。この場所の存在を知っていないとたどり着くのは難しい、自然に秘匿された空間だった。 そこには、雪が積もれば潰れそうなプレハブ倉庫がぽつんと建っていた。 「いやぁ。見つけてくださって助かりました」 大きな黒いスポーツバックを肩から提げたグリーンが、倉庫前の俺たちにそう声をかけてきた。表情はマスクとサングラスでわからないが、穏やかな声だった。 明石は外れたアルミサッシの扉を見やりながら、「でも」とつぶやいた。 「間に合わなかった」 グリーンに続いて、レッドとブルーが建物のなかへとはいっていく。 三人の訪問に床が軋む。屋根はいたるところから空が望めて、割れた窓ガラスが散乱している。床板は腐って抜け落ち、蔦が侵入してきていた。散乱している落ち葉や枯れ枝を踏む乾いた足音が止まった。 そこには青白い足が投げ出されていた。ワインレッドのブーツを履いている。 グレーのコートが頭と上半身にかけられていた。人の形のその膨らみに動きはない。 掃除屋三人衆は言葉もなく、手のひらを合わせて数秒間の黙祷をした。 レッドがコートをそっとはぎ取る。     
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