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頭上で軽く揺すった。なかに入っているものが重なり合うように転がった。
青白い、節ばった、見覚えのあるパーツだった。
だが単体として瓶のなかにあるはずがないものだ。寧ろあってはいけない。
根元で切り落とされた十本の指だった。切断面の血が乾いて粉になっている。
女は口と目に粘つくような笑みを浮かべながら、瓶に頬を擦りよせる。その首元には例のコインがついたネックレスをしていた。
「彼が言うにはこのあたりだと。小指から順に時間をかけて、指が切り落とされて行く痛みで激しく悶えていましたが、わたくし、教えてもらったのです。そこの倉庫で女の首を絞めて殺したと。――ねぇ、そう言っていたわよね」
まるで甘えるように瓶を振ると、カチンと固い物がぶつかる音がした。
指に埋もれて見えるのはシルバーの指輪だった。
死体袋で眠る女の指にあったのと同じものだった。
「彼女の恋人、殺したの?」
明石が問うと周囲の雑草がざわめきはじめる。草木をかき分けて数人の男たちが現れた。
女は楽しそうに首を横に振った。揺れる黒髪が狂気を振りまくようだった。
「いいえ。一端は死んでしまいましたが、また生き返るので、殺してはいません」
支離滅裂な言葉に素直に首をかしげる明石へ、グリーンが囁いた。
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