雨が降った時だけは…

気付いてしまった、私

こういう接客の仕事をしていると、どうしても理不尽なクレームというのは必ず存在するらしい。
だけど、来店されるお客さん皆が皆、そういう人ばかりじゃないから、仕事は辛いものだと思わないで欲しい…彼は、いつものように優しい声で、私にそう言ってくれた。

彼も今までに何度も仕事中に怒鳴られたり、殴られそうになったり、色々な経験をしてきたと語ってくれた。
持ち帰りの際にお箸を幾つ付けるかを尋ねる前にさっさと取り上げるように去ってしまったお客さんが、後で戻ってきて、箸が入ってなかったと言って二時間近くガミガミと怒り続けたとか、奥の多人数用の広いテーブルに二名客が勝手に座ろうとしていたから、手前のテーブルに案内しようとしたらいきなり怒って殴り掛かってきたり…それらに比べたら、今回の私は怒鳴られただけなので、まだマシな方だと思えた。

今回は運が悪かっただけ、たまたまあそこにいたのが私だったから私が怒鳴られただけで、もしあそこにいたのが彼や雪さんだったとしても、代わりに怒鳴られていただけだと、彼は優しくフォローしてくれた。
そんな筈はないと自分ではわかっていても、彼のその思いやりが今の私には堪らなく嬉しかった。