気付いてしまった、私

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あの後、更衣室で怯えながら泣いていた私に、そのお客さんが帰った後にそう言って励ましてくれた彼。 あの時もし彼がいなかったら、私の心は折れていたかもしれない…初めてのバイトで漸く慣れ始めた頃の私にとっては、それ程の出来事だった。 常連のお客さんの中には、いつも帰り際に"美味しかったよ"と笑顔で声を掛けてくれる人がいたり、親しみを込めて名前で呼んでくれる人がいたり、時折差し入れを持ってきてくれる人もいるらしい。 そういえばこの前貰った苺大福もそうか。 「姫ちゃんは誰よりも頑張ってると思うで」 ありがとう、風見君… もうすぐ夏休み、やっぱり梅雨時になると雨の日が多くなり、そうなると必然的に彼と話せる機会も増える。 あまりに暇なある日、私は彼とモノマネ大会をして遊んだ。 大会とは言っても私はモノマネなんて全く出来ないので、彼の一人モノマネ大会で私は似てる似てないの判断をするだけのしょうもない遊び。 「フグ田くぅん、今夜一杯どうだい?」 これはかなり似てる。 「俺はただ壊すだけだ、この腐った世界を…」 これも似てるけど、声が小さくて若干聞き取り辛い。 「全ての食材に感謝を込めて、いただきます!!」 これもかなり完成度が高い。
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