気付いてしまった、私

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そのアイドルグループというのは、今中高生を中心に絶大な人気があるらしいけど、私は流行りに疎くてセンターの娘しか知らなった。 そしてそのセンターの娘でさえ、顔は知っているけど名前は知らない…そんな有様だった。 彼が聞かせてくれた彼が一番好きなメンバーは、このグループのキャプテンらしい。 前にも一度見せて貰った事がある、黒髪ロングの清楚な雰囲気の……そうか、彼はこういう女性がタイプなのか。 私も黒髪ロングだし、少しはチャンスあるかも。 でも彼曰く、見た目のタイプは殆どないから、その娘のキャラが面白くて優しそうで頑張ってる感が伝わって好きみたい。 そんなこんなで夏休みは訪れた。 八月にもなると学生は当然休みなので、学生の子供がいる昼のパートさんは皆休むそうで、代わりに私達学生バイトが交代で朝から入る事になる…よくある自然な流れだった。 この頃になると、就活中の雪さんは若干の陰りを見せるようになっていた。 やっぱり色々不安な事でもあるのだろうか、高校生の私にはまだわからない悩みもあるのだろう。 そんなある日、盗み聞きするつもりは全くなかったんだけど、更衣室の扉越しに偶然雪さんと彼が話しているのを聞いてしまった。 「ねぇ風見君、好きな娘いる?」 「ん…秘密」 「前にもそう言ってはぐらかしてたじゃん。いい加減教えてよ」 「んー…」
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